日本人のむし歯の発生率は非常に高くなっています。 小さなお子様や若い人は予防意識の高い世代のご両親に育てられたため減少傾向にありますが逆に成人では増えています。 特に高齢者(65歳以上)でその傾向が著しくなっています。
むし歯の3大要素
むし歯は、口のなかにすんでいる細菌がつくり出す酸により歯が溶ける病気で歯科学的に正しくは「う蝕(しょく)」といいます。
以前からむし歯は、「むし歯菌」・「歯の質」・「糖分」の3大要因が重なった時にできるとされてきました。
虫歯菌が多く、歯の質が弱く、糖分をよくとる人は、むし歯になりやすPいと考えられてきました。
しかし、この3大要因の影響度は個人差が大きく3大要因が揃っても必ずむし歯になるあけではありません。
現在はこの3大要因に加えて唾液の性状や分泌量、飲食回数、糖分とむし歯菌が歯についている時間など、多くの要因がむし歯のリスクになると考えられています。
3大要因が揃っていても日頃の生活習慣やケア次第でむし歯は防げるということです。
ミュータンス菌
むし歯菌の代表はミュータンス菌で、生まれたての赤ちゃんの口のなかには存在しません。
感染するのは乳歯が生え揃ってくる1歳半~2歳半頃で、感染源は、ミュータンス菌を持っているご両親などが口移しで食べものを与えたり、
同じ食器や箸、スプーンを使ったりすることが原因とされています。
ミュータンス菌が歯に付着し歯垢(プラーク)をつくり、食べ物の中に含まれる糖質(とくに砂糖)を代謝し、歯垢の内部で酸をつくります。
この酸が歯の成分であるカルシウムやリンを溶かし、むし歯が発生します。
口のなかに入ったミュータンス菌は食べ物や飲み物に含まれる糖分、特に砂糖を代謝してグルカンというネバネバした物質を産生し、
歯の表面を覆うエナメル質にそれをつけて自分のすむ場所をつくり、そこに他の細菌も住みつきます。この細菌の住かが歯垢でネバネバとした状態で歯にくっついています。
ミュータンス菌は住かで飲食物中の糖分を分解して酸をつくり人体でもっとも硬い組織であるエナメル質を溶かし、歯のミネラル分であるカルシウムやリン酸を溶出させます。
これを「脱灰(だっかい)」といいます。これがむし歯の始まりとなります。
※エナメル質が溶け始める水素イオン濃度はpH(ペーハー)5・5の酸性です。
再石灰化と二次う蝕
酸の原料は飲食物中の糖分で、食べたり飲んだりするのをやめれば、酸もつくられません。
酸性になった口のなかも唾液の働きで中和されます。
唾液はリン酸やカルシウムを含んでいますので、
脱灰された歯を修復する働きがあり「再石灰化」といいます。
私たちの口のなかでは飲食のたびに脱灰と再石灰化が繰り返されて、脱灰が起こっても、再石灰化されていれば、むし歯にはなりません。
でも、いつも糖分を口にしている、いわゆる「だらだら食べ」をしていると、唾液による中和や再石灰化が間に合わず、
脱灰された部分が続きその部分がむし歯になっていきます。
歯垢は出来た直後は歯ブラシでこすれば取れます。
しかし、歯みがきが不十分で磨き残しがあると、歯垢は次第に厚みを増しエナメル質の周囲で「バイオフィルム」と呼ばれる膜をつくり、
その中で菌が増殖していきます。 唾液は、バイオフィルムに邪魔されてエナメル質に触れることができず、酸の中和作用や再石灰化の機能が発揮できなくなります。
一方、歯垢内でつくられた酸は拡散しないので高い濃度でエナメル質を侵し続けます。
バイオフィルムができると細菌はグルカンをエサにして生き続けどんどん増殖します。
バイオフィルム構造になった歯垢は細菌にとって非常に居心地のよい場所で、むし歯の発生や進行を強力に促す環境に発展します。
ミュータンス菌がいるのは歯垢の中なのでむし歯になりやすいのは、歯垢がつきやすく、また歯を磨いても落としにくい部分です。
具体的には、奥歯の噛み合わせの溝の部分、菌と歯ぐきとの境目、隣り合う歯と歯の間の面などです。
さらに大人の場合治療した歯があると詰め物と歯の隙間に細菌が入りこみ治療した歯が再びむし歯になりやすく、
これを「二次う蝕」といいます。細菌は治療したところより奥に進むことが多く、神経に達するむし歯の原因になります。
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